武蔵一宮氷川神社 氷川参道100年の森プロジェクト

武蔵一宮氷川神社

2400年以上の歴史をもつといわれ、大いなる宮居として大宮の地名の由来にもなった日本でも指折りの古社。武蔵一宮として関東一円の信仰を集め、初詣には多くの参拝者で賑わいます。

氷川神社名の社は大宮を中心に、埼玉県および東京都下、神奈川県下におよびその数は280数社を数えます。

日本一長い氷川参道

南北2キロの参道が大宮の街なかを縦断している。元々は杉や檜の参道で、現在は戦前に植えられた欅がメインとなる。

現状の問題点

高木類の立枯れ

10m以上ある大きな樹木が何本も枯れてしまい、倒木の恐れがある。

植栽しても育たない

新しく植物を植えても数年傷んでしまい、発育が悪い。そのため大木が枯れた後の次世代の樹木が育っていない。

景観が悪い

見た目の統一感がなく、どうにか生き残っているといった感じ。

氷川神社の思い

人と自然の共存

地元住民の誇りでもある「氷川参道」を生態系豊かな森にすることで、人と自然とが共存する理想的な都市の姿を目指したい。

参拝者の皆さんや地域住民の安全のため、立枯れを原因とした倒木を避けたい。

氷川神社権宮司 東角井正臣氏

参道の四季

100年の森プロジェクト
クラウドファンディング

目的①:みんなの森を作りたい

施主と業者で森を作るのではなく、少しでも多くの人に関わってもらい、僕たちがいない次世代の未来へ繋ぐ「みんなの森」にしたい。

目的②:学びの場とする

この環境保全のプロジェクトを通して、環境問題、地域活性化、アントレプレナーシップなど、学生から大人までみんなが自分自身にもできることを考え「学びの場」とする。

クラウドファンディングの主催:一般社団法人green4

環境保全・教育をテーマとし、メンバーがそれぞれの本職で培った専門性を生かして活動しています。産業能率大学、姫路女学院、埼玉大学工学部などで授業を展開。今回は神社を中心とした環境保全活動として、現場作業だけではなく、広報宣伝活動なども埼玉大学の学生と取り組んでいきたいと考えています。

現状の調査とアプローチ

土中環境専門家
高田造園設計事務所
高田宏臣氏

高田造園設計事務所代表。1969年千葉県生まれ。東京農工大学農学部林学科卒業。 1997年独立。2003~2005年日本庭園研究会幹事。2007年高田造園設計事務所設立。 2016年~2019年NPO法人ダーチャサポート理事。2016年~NPO法人地球守代表理事。 国内外で造園・土木設計施工、環境再生に従事。土中環境の健全化、水と空気の健全な循 環の視点から、住宅地、里山、奥山、保安林等の環境改善と再生の手法を提案、指導。大地 の通気浸透性に配慮した伝統的な暮らしの知恵や土木造作の意義を広めている。行政や民間 団体からの依頼で、環境調査、再生計画の提案、講座開催、および技術指導にあたる。 主な著書に『土中環境』(建築資料研究社)『これからの雑木の庭』(主婦の友社)、共著に 地球守の自然読本シリーズ、他

高田氏の主な著書紹介

よくわかる土中環境 イラスト&写真でやさしく解説

PARCO出版
2022/8/1

新版 これからの雑木の庭

主婦の友社
2021/6/1

土中環境 忘れられた共生のまなざし、蘇る古の技

建築資料研究社
2020/6/19

現状と目標

最大の原因は「踏圧」
→日常的に植栽帯に人が入り込み、硬く踏みならされ、さらに落ち葉などの有機物は綺麗に掃除されていることで土中環境が悪化している。

透水性、通気性、保水性をもつ土壌環境を目指す。

現状

目標

引っ張る

具体的なアプローチ

切株の根元に苗木を密植

切株の根元の土中には空洞がたくさんあり、次世代の樹木が発芽しやすい。そこを狙って縦方向に穴を何箇所も開け、炭・くん炭・落ち葉・グリ石・ワラなどを使い、菌糸が張りやすい環境を作る。また、密植することで枝を上に伸ばし、土中の根っこを縦方向に深く伸ばさせる。

地域の環境の改善

山・川・里・海のつながり

山と川は一体であってどちらかだけが健康ということはない。それを繋ぐのが里の暮らしであり、昔の人は暮らしながらその関係を保ってきた。里の営みにおいて水源を守る御神木や鎮守の森を大切にし、要所に溝や池」、井戸を掘って土中で水と空気が動くように働きかけていた。市街地である大宮の真ん中に氷川神社の鎮守の森と長い参道が存在し続けることは、山と海の水脈の中継地点としてとても重要である。

樹種

①根を深く張り、大木になる広葉樹
→コナラ、カシ、クス、カツラ、シイetc.

②高木の下で色付け
→モミジ類、ヤマザクラetc.

現状

10年後

引っ張る

こんな未来にしたい!

①循環する森の形成

土中環境改善により、植え付けた様々な種類の苗木が深く根を張り、生態系豊かな森を形成する。次世代が育つことで自然に循環する森となる。既存樹木が樹勢回復し、太い枝を枯らすことがなくなり、参拝者や地域住民の安心につながる。


②地域の環境改善

許容力のある森が形成されることで、ゲリラ豪雨やヒートアイランドなどの災害に強い都市づくりに貢献する。また、山と海の中継地点として荒川水系の環境改善に役立つ。


③「環境保全・教育活動」の拠点

神社を中心とした環境保全の街づくりの好例となり、「環境保全」の拠点となる。また、教育活動のフィールドとしても活用する。